オフィシャルブログ

リペアセッペのよもやま話~part23~

皆さんこんにちは!

リペアセッペの更新担当の中西です!

 

さて今回のよもやま話では

~やりがい~

新築偏重からストックを長く使う時代へ。補修工事は“壊れたところを塞ぐ”から、劣化原因の特定→再発防止設計→品質の可視化まで担う総合実務へ変わりました。本稿では、現場のリアルに根ざしたいま求められるニーズと、この仕事ならではのやりがいを整理し、すぐ使える実装ヒントまでまとめます。


1|いま現場が補修に求める「10のニーズ」

  1. 原因特定(診断の質)
     目視・打診だけでなく、赤外線・GPR・電位測定など非破壊検査の最適組合せで“なぜ壊れたか”を特定。

  2. 再発防止の設計
     断面修復だけで終わらず、遮塩・防水・通気・排水・熱応力まで踏み込んだ“機能の再構築”。

  3. 付着と界面管理
     下地の含水率・pH・粗さ・プライマー相性を管理し、“剥がれない”根拠を数値で示す。

  4. ひび割れの扱い分け
     構造的/表層・静的/進行性を見極め、誘発目地・弾性下地・樹脂注入・メッシュ補強を使い分け。

  5. 耐久・維持費の最適化
     初期費だけでなくライフサイクルコストで提案。塗膜グレード、保護材、点検周期をセットで明示。

  6. 短工期・操業継続性
     夜間・段階施工・仮設最小化・無足場(ロープアクセス等)で止めない補修を設計。

  7. 安全・環境への配慮
     粉じん・騒音・化学物質管理、低VOC・低炭素材料、廃材分別。近隣合意も成果の一部。

  8. デジタル台帳(言える化)
     写真・膜厚・付着・温湿度・材料ロットをQR/PDFで納品。保険・監査に強い“証拠品質”。

  9. 規格・法令適合
     躯体・防水・仕上げ規格、耐火・避難・足場・化学物質関連の遵守と記録

  10. 説明責任とコミュニケーション
     住民・施設運用者・テナントへ工期・騒音・におい・動線を事前に説明し、期待値を整える。


2|発注者別「ニーズの翻訳」早見表

  • オーナー・管理者:再発防止・維持費低減・保険適合・工期短縮・稼働影響最小。

  • 設計・CM:原因の論理性、仕様選定根拠、試験値・台帳の整合、将来更新のしやすさ。

  • 居住者・テナント:安全・静音・におい配慮、周知の丁寧さ、共用部の清潔さ。


3|現場で使える「サービス・パッケージ」例

  • 診断スタートパック
     打診+赤外線+GPR+ポイントコア試験をA3一枚の劣化マップに。補修優先度(高・中・低)を色分け。

  • 再発防止パック
     断面修復+防錆+表面含浸/コーティング+排水・通気ディテール改善。施工前後の水試験を動画で添付。

  • 操業継続パック
     夜間・ゾーニング・粉じん/臭気管理・無足場化をセット。騒音カレンダーと掲示物テンプレ付き。

  • 品質“言える化”パック
     付着強度、膜厚、温湿度ログ、材料ロット、施工写真をQRで台帳化し、引渡し当日にPDF納品。


4|チェックリスト(抜粋:そのまま現場で)

計画前

  • 劣化因子仮説(中性化/塩害/凍害/疲労/ASR)

  • NDTメニューの選定と採取位置図

  • 性能目標(耐久年・水密・美観・運用条件)

設計・材料

  • 下地含水率・pH・粗さ/プライマー適合

  • ひび割れ分類と処置方針(注入・充填・誘発目地)

  • 断面修復材・防錆材・保護材の組合せ根拠

施工・品質

  • 養生計画(温湿度・風・日射)、可使時間

  • 付着強度・膜厚・電位・含水など検査計画

  • 写真台帳:全景→中景→接写(要点)

引渡し・維持

  • 点検周期・小補修の目安

  • 再発兆候チェック(錆汁・白華・鼓音・漏水跡)

  • 安全・清掃マニュアルの更新


5|ショートケース(要点のみ)

A|海沿いRCバルコニー(塩害)

  • 診断:電位測定とCl⁻分析で腐食ゾーン確定。

  • 施工:断面修復+防錆+含浸+手摺根元の排水改善

  • 結果:錆汁消失、点検周期を延伸。外観も安定。

B|集合住宅のタイル外壁(浮き・剥落リスク)

  • 診断:打診+赤外線+引張試験で範囲を定量化。

  • 施工:アンカー固定+部分置換、上から可とう形塗膜でクラック追従。

  • 結果:落下リスク大幅低減、再塗装周期を延長

C|工場床(操業継続×薬品)

  • 診断:薬品リスト・浸食状況ヒアリング。

  • 施工:ポリマーセメント下地調整→耐薬品コーティング通路ゾーニングで稼働維持。

  • 結果:洗浄時間30%短縮、欠損再発なし。


6|KPI(成果を数値で語る)

  • 再劣化率(1・3年後の不具合発生件数)

  • OTIF(時間内・数量内達成率)

  • 付着合格率/膜厚合格率

  • 苦情件数(騒音・におい・清掃)

  • LCC削減額/CO₂削減量(推計)


7|この仕事の“やりがい”——8つの瞬間

  1. 原因がほどけた瞬間
     データがつながり、劣化の道筋が“見える”。対症療法ではなく本質対策に辿り着ける快感。

  2. 機能が戻る・上がる
     漏れていた所が止まり、剥がれていた壁が静かになり、使い勝手と安全が目に見えて改善。

  3. 数字で信頼される
     付着・膜厚・温湿度ログが揃い、**「だから大丈夫」**を証拠で語れる誇り。

  4. 止めずに直せた
     操業・営業・生活を止めない段取りがハマったときの達成感。

  5. 多職種の連携が噛み合う
     設計・監督・材料メーカー・職人が同じ地図で動き、手戻りゼロで着地。

  6. 資産価値に効く
     延命・美観・安全の向上が賃料・満足度・評価額に跳ね返る実感。

  7. 社会と環境に効く
     撤去・建替えよりCO₂が小さい“補修の価値”を自分の手で実装できる。

  8. 知識が資産になる
     失敗も成功もSOPと台帳に蓄え、次の現場で再現できる学びの循環。


8|90日アクション(すぐ効く三手)

  1. 診断テンプレを整備
     対象別(外壁/床/屋上/鉄骨)のNDTセットと採取位置図をA3一枚に標準化。

  2. 台帳DXを開始
     写真・検査値・ロット・温湿度をQRで一元管理。引渡し日にPDF納品できる体制へ。

  3. 材料ピラミッドを社内化
     断面修復・防錆・表面保護・注入・弾性下地の推奨組合せ表を作り、試験施工でSOPに落とす。


結び

補修工事の本質は、壊れた表面を埋めることではなく、壊れた理由を断ち切ることにあります。
原因に迫り、機能を再設計し、記録で未来に責任を持つ——その一連の営みが、建物と街の寿命を確実に伸ばします。

今日の一手は、十年先の安心につながる。
“直した”では終わらず、なぜ・どう直し、どれだけ持つかを語れる現場を、次の案件から一緒に作っていきましょう。